- 御本尊
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詩仙堂の御本尊は、馬郎婦観音(めろうふかんのん)です。 所願成就・学業成就に御利益があると言われています。 馬郎婦観音の言い伝えは、唐の時代、憲宗元和4年(809年)。今から1200年以上前の中国、唐の時代にまで遡ります。
中国・長安の西、鳳翔地方では若者たちの間で、伝統的な教養として六芸の「馬術」と「弓術」の修練に余念がありませんでした。その頃、外来思想の仏教が浸透していましたが、若者たちは仏教が説く三宝(仏・法・僧)に耳を傾けようとせず、蔑視さえしていました。
ある日、彼らの町に妙麗な一人の婦人が現れ、若者たちが「わが妻に」とこぞって求婚しました。すると婦人は、求婚を引き受ける代わりに『観音経』や『金剛般若経』の暗唱など全28項目の課題を与えました。そして見事、馬(ば)という1人の若者が課題を成したのです。しかし、婚礼の席に花嫁は現れず、にわかに息絶えてしまいました。
それから数日後、紫の衣に身を包んだ老僧が現れ、馬に花嫁を埋葬させた場所を案内させました。その場につくと、棺の中から一連の金の鎖状の骨が出てきたのです。
「これは観世音菩薩の化身である。仏教を信じようとしない、きみたちの閉じた心の扉をひらくために、方便として婦人の姿をかり、ここから天空へ飛び去ったのである」
この観音は、宋代に至につれ盛んに信仰され、宋末頃に絹本著色図として描かれた一枚が、わが国の京都大徳寺に伝えられたところから、鎌倉時代にはこの観音の信仰が行われたものと考えられています。